今後10年間で、なくなる職業、増える職業 2026年3月版 最新研究と雇用統計で読む「消える仕事・伸びる仕事・中身が変わる仕事」

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今後10年間で、なくなる職業、増える職業 2026年3月版 最新研究と雇用統計で読む「消える仕事・伸びる仕事・中身が変わる仕事」

公開日: 2026-03-14

本稿は、2026年3月14日時点で確認できる最新の国際機関レポート、公的雇用統計、研究資料をもとに、「今後10年間で、なくなる職業、増える職業」というテーマを整理した記事です。

結論を先に述べると、今後10年間で本当に起きるのは、職業が一斉に消えることよりも、定型的で事務処理中心の仕事が大きく縮小し、ケア、AI・データ、サイバーセキュリティ、再生可能エネルギー、現場サービス系の仕事が増えることです。さらに重要なのは、多くの仕事は「なくなる」のではなく、AIを前提に中身が再設計されるという点です。

したがって、2026年時点で最も正確な問いは「どの職業がゼロになるか」ではありません。より正確には、どの職業が縮小し、どの職業が増え、どの職業がAIと共に再編されるのかを見極めることです。本稿では、その答えを世界経済フォーラム、ILO、OECD、米国労働統計局の最新データから立体的に示します。

要点

  • 世界全体では純減ではなく純増の見通し: 世界経済フォーラムの 2025年1月7日公表Future of Jobs Report 2025 は、2030年までに1億7,000万件の新しい仕事が生まれ、9,200万件が押し出され、差し引き7,800万件の純増になると見込んでいます。
  • 増える職業はAIだけではない: WEF では、割合ベースの成長上位に big data specialists、fintech engineers、AI and machine learning specialists が並ぶ一方、絶対数では delivery drivers、software developers、building construction workers、shop salespersons、care jobs、教育関連職、農業職の増加も目立ちます。
  • なくなるというより縮小する職業は定型事務・定型販売: WEF と米国労働統計局の最新見通しでは、cashiers、clerical roles、administrative assistants、data entry keyers、bookkeeping clerks、telemarketers、telephone operators などが縮小側にあります。
  • ILOの最新研究は「置換」より「変容」を強調: ILO の 2025年5月20日公表の Generative AI and Jobs: A Refined Global Index of Occupational Exposure では、世界の4人に1人が何らかのGenAI曝露を持つ一方、最も可能性が高い影響は職業全体の消滅ではなく仕事の変容だと整理されています。
  • ケア需要は今後10年の最重要テーマの一つ: OECD は 2025年7月9日時点で、人口高齢化が各国の人手不足を強めると警告しています。BLS でも看護・介護・医療管理職が高成長です。
  • 再生可能エネルギーとインフラ系も強い: BLS の 2024-2034年予測では、wind turbine service technicians が49.9%増、solar photovoltaic installers が42.1%増です。AIだけでなくエネルギー転換も雇用の大きな源泉です。
  • 最も危ない判断は「自分の職種名だけ見て安心すること」: 同じ accountant、teacher、customer support でも、中身は大きく変わります。今後10年は職種名の存続と仕事内容の存続が一致しない時代です。

まず結論 「なくなる職業」は本当にゼロになるのか

結論から言えば、「なくなる職業」という表現は半分正しく、半分誤解を招きます。 現実には、ほとんどの職業はある日突然ゼロにはなりません。より多く起きるのは、採用数が減る、業務の一部が自動化される、必要人数が減る、若手の入口が細る、職種名は残るが仕事内容が別物になるという変化です。

そのため、今後10年間を読むうえでは、職業を次の三つに分けるのが有効です。

  1. 大きく縮小する職業: 定型事務、定型入力、定型販売、単純な問い合わせ処理の比率が高い仕事。
  2. はっきり増える職業: ケア、AI・データ、セキュリティ、再エネ、建設、保守、対人サービスのように、需要側の追い風が強い仕事。
  3. 職種名は残るが中身が変わる職業: 会計、法務、教育、営業、マーケティング、マネジメントのように、AIが副操縦士化する仕事。

この三分類で見ると、今後10年の雇用変化は「機械が人間を全部追い出す」という物語ではなく、定型処理は圧縮され、人間の判断、対人対応、責任、現場性、統合力が価値を増すという方向に整理できます。

最新の大局観 世界全体では何が起きるのか

世界経済フォーラムの Future of Jobs Report 2025 は、2025年から2030年にかけての雇用変化を考えるうえで最も重要な最新資料の一つです。この報告書は、55の経済圏、22産業クラスター、1,000社超、1,400万人超の労働者をカバーしています。

この報告書によれば、2030年までに1億7,000万件の仕事が生まれ、9,200万件が押し出され、純増は7,800万件です。これは重要です。なぜなら、「AIで仕事が消える」という片側だけの説明では、現実の雇用の全体像を誤るからです。実際には、AI、ロボティクス、デジタル化、グリーントランジション、高齢化、地政学、生活コスト変化が同時に動き、減る仕事と増える仕事を同時につくります。

また WEF は、2030年までに仕事に必要な主要スキルの39%が変化すると見ています。これは、同じ職種に残る人でさえ、仕事内容が大きく変わる可能性を意味します。今後10年間の本質は「失職」だけでなく、仕事内容の再配線です。

今後10年間で大きく縮小しやすい職業

まず、縮小が強く見込まれるのは、ルールベースで、繰り返しが多く、入力・照合・転記・定型応答に寄った仕事です。AI と従来型ソフトウェアの両方が入りやすく、さらにセルフサービス化やEC化とも相性が良いからです。

WEF の 2025年版では、縮小職としてcashiers and ticket clerks、administrative assistants and executive secretaries、printing and related trades workers、accountants and auditors などが挙げられています。ここでのポイントは、会計そのものが消えるのではなく、定型的な記帳、照合、報告の一部が圧縮されることです。

米国労働統計局の 2024-2034年予測も、これをかなり強く裏づけています。割合ベースの減少上位には、word processors and typists が36.1%減、telephone operators が27.5%減、data entry keyers が25.9%減、telemarketers が22.1%減などが並びます。さらに人数ベースでは、cashiers が31.36万人減、office clerks, general が17.78万人減、customer service representatives が15.37万人減、bookkeeping, accounting, and auditing clerks が9.43万人減です。

この二つの資料を突き合わせると、次の職種群は今後10年で特に注意が必要です。

  • 現金会計・レジ中心の販売補助: セルフレジ、モバイル決済、ECシフト、無人店舗技術の影響を受けやすい。
  • 単純入力・転記系: data entry、伝票入力、単純照合、フォーマット変換のような作業は自動化されやすい。
  • 定型受付・交換・取次系: 電話交換、単純一次受け、単純FAQ対応はAI音声・チャットに置き換えやすい。
  • 定型的な帳票・会計補助: 記帳、突合、定型レポート作成の一部は AI とRPA に吸収されやすい。
  • 紙や物理媒体に依存する作業: 印刷関連、紙書類保管、紙台帳中心の職務は構造的に不利です。

ただし、ここでも「職種全体が完全消滅する」と読むのは危険です。たとえば customer service は減少予測がある一方、高単価の顧客対応、クレーム調整、継続利用支援、複雑案件のエスカレーションはむしろ重要になります。つまり、低付加価値の定型層が薄くなり、高付加価値の判断層が残るのです。

今後10年間で増える職業 1 AI・データ・ソフトウェア・セキュリティ

AI時代なので、まず増えるのはデジタル系です。ただし「AI職だけが増える」と考えるのは狭すぎます。WEF の 2025年版で割合成長上位にあるのは、big data specialists、fintech engineers、AI and machine learning specialists、software and applications developers、security management specialistsです。

米国労働統計局でも、data scientists が2024-2034年に33.5%増、information security analysts が28.5%増、computer and information research scientists が20%増と見込まれています。さらに産業側でも、computing infrastructure providers, data processing, web hosting, and related services が 20.3%増です。

ここで大事なのは、増えるのが「純粋なAI研究者」だけではないことです。現場で本当に必要になるのは、データ基盤、MLOps、アプリケーション実装、ガバナンス、サイバー防御、業務統合、モデル運用、監査に関わる人材です。つまり、今後10年で強いのは、モデルを作る人だけでなく、AIを現場に入れて壊れず回す人です。

今後10年間で増える職業 2 医療・介護・メンタルヘルス・教育

見落とされやすいですが、今後10年で最も構造的に強い分野の一つがケアです。理由は単純で、先進国を中心に人口高齢化が進み、慢性的な人手不足が続くからです。

OECD は 2025年7月9日Employment Outlook 2025 で、人口高齢化が将来の労働供給を圧迫し、労働市場の大きな制約になると警告しています。さらに OECD の Health at a Glance 2025 では、long-term care workers の需要は今後も増え続けると明示されています。

米国労働統計局の予測でも、nurse practitioners が40.1%増、medical and health services managers が23.2%増、home health and personal care aides が17%増、substance abuse, behavioral disorder, and mental health counselors が17%増です。特に home health and personal care aides は毎年平均 76.58万人の求人開口が見込まれています。

WEF も care jobs と教育関連職の増加を強調しています。ここから読めるのは、AIの進歩で人間の仕事が減る一方ではなく、人間にしか担いにくいケア、信頼形成、観察、責任、現場介入の価値がむしろ高まるということです。医師や看護師だけでなく、介護、在宅支援、リハビリ補助、メンタルヘルス、健康情報管理、教育支援まで裾野は広いです。

今後10年間で増える職業 3 再生可能エネルギー、建設、保守、現場技能

AIばかりに目を奪われると見落としますが、再生可能エネルギーとインフラ更新は今後10年の巨大テーマです。米国労働統計局では、wind turbine service technicians が49.9%増、solar photovoltaic installers が42.1%増と予測されています。産業別でも、solar electric power generation は180.2%増、wind electric power generation は81.4%増です。

WEF でも、環境・再エネ関連エンジニアが高成長職の例外的上位に入っています。ここが示すのは、今後10年間の雇用は「ホワイトカラー対AI」だけでは説明できないということです。エネルギー、電力、建設、保守、設備点検、施工管理のような物理世界を動かす職種は依然として強い。

加えて、建設や設備保守は完全自動化が難しい現場条件が多く、地域性や安全責任も重いため、需要が消えにくい。むしろ、今後はAIを使いこなす現場技能職という新しい強職種が増えていく可能性が高いです。

「なくならないが、中身が激変する職業」が最も多い

ILO の最新研究が重要なのは、ここです。世界の4人に1人が何らかのGenAI曝露を持つ一方、最も可能性が高いのは職業消滅より職務変容だと ILO は整理しています。さらに 3.3%の世界雇用が最も高い曝露カテゴリーにありますが、それでも直ちに「その職業がすべて消える」という意味ではありません。

つまり、今後10年間で本当に数が多いのは「完全になくなる職業」より、AIのせいで中身が別物になる職業です。代表例は次の通りです。

職種

変わる部分

残る価値

会計・経理

記帳、照合、定型レポート、自動仕訳

判断、監査対応、制度解釈、例外処理、経営説明

カスタマーサポート

FAQ、一次応答、定型案内

複雑案件、感情調整、継続支援、解約防止

教育

教材草案、小テスト、事務連絡、個別練習生成

動機づけ、評価責任、対人支援、教室運営

営業・マーケティング

資料初稿、分析、ターゲティング、文案生成

顧客理解、交渉、関係構築、最終提案

法務・コーポレート

契約レビュー下書き、条項検索、要約

責任判断、リスク許容、交渉、ガバナンス

この表が意味するのは、職種名より、仕事の中で自分が担っているタスク構成を見るべきということです。職種名が同じでも、定型比率が高い人ほどリスクが高く、責任、対人性、例外処理、現場判断が多い人ほど残りやすいのです。

日本にとって何が重要か

日本では、この議論はさらに切実です。理由は、AI導入圧力と高齢化圧力が同時に来るからです。OECD の 2025年版 Japan note では、AI利用者の中でも高齢層ほどAI関連のリスキリングやアップスキリングに参加しにくいことが示されています。たとえば AI 利用者のうち、企業研修へ参加した割合は、50歳以上で25%、35歳未満で37%です。

これは、日本で今後10年に起こりうる分断を示します。つまり、仕事がなくなるかどうか以上に、学び直しに乗れる人と乗れない人の差が広がる可能性があります。日本では人手不足が強いので、仕事そのものが消えないケースも多いでしょう。しかしその場合でも、同じ会社、同じ職種の中で、AIを使える人へ仕事が再配分される可能性が高いです。

したがって、日本で本当に重要なのは「どの職業がなくなるか」より、どの年齢層・職種層が職務再設計に取り残されやすいかを見ることです。これは企業の人材戦略にも直結します。

今後10年で強い人の共通点

最新の資料を横断すると、今後10年で強いのは次の能力を持つ人です。

  • AIを使って生産性を上げられる: 置き換えられない人ではなく、AIを使って成果を増やせる人。
  • 対人責任を持てる: 顧客、患者、学習者、チームに対して責任を負える人。
  • 例外処理ができる: マニュアル外の判断、調整、交渉ができる人。
  • 現場や物理世界に強い: 保守、施工、ケア、医療、設備、物流のように身体性や現場性がある人。
  • 学び直しが速い: ツール変更や業務変更に追随できる人。

逆に、定型入力だけ、定型説明だけ、定型転記だけに役割が寄っていると、今後10年で交渉力は弱まりやすいです。これは学歴の高低だけの話ではありません。仕事のタスク構成がどれだけAIに似ているかが重要です。

2026年3月14日時点の最終結論

今後10年間で、なくなる職業、増える職業は何か。 2026年3月14日時点での最も根拠に近い答えはこうです。

大きく縮小するのは、定型事務、定型入力、定型販売、単純問い合わせ処理を中心とする職種群です。具体的には、cashiers、clerical roles、data entry、telemarketing、単純会計補助などが代表です。

増えるのは、AI・データ・サイバー、医療・介護・メンタルヘルス、教育支援、再生可能エネルギー、建設、設備保守、対人サービスです。特に care と energy transition は、AI以外の巨大雇用ドライバーとして軽視できません。

そして最も重要なのは、多くの仕事は消えるのではなく、AIと共に再設計されることです。今後10年の勝敗を分けるのは職種名ではなく、その仕事の中で人間にしか残らない価値をどこまで増やせるかです。したがって、最も危険なのは「自分の仕事はまだ残るから大丈夫」と考えることです。残る仕事ほど、中身は先に変わります。

参考文献・参照先

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